奈良はミステリーに満ちている

奈良はミステリーに満ちた不思議な土地である。

古代連合国家の成立と発展、曖昧模糊とした初期統治者の素性、国家の成り立ちは今でも不透明なところが多い。

大和朝廷の成立には幾つもの争いもあったのだ。そして後世に◯◯の変や乱といわれる多くの事件の影には、言われもなく殺されていった正統な後継者とその一族の涙や恨みが渦巻いている。

倭国大乱、葦原中津国平定、神武東征、武埴安彦の乱、四道将軍の全国派遣

大和武尊の征伐遠征、三韓征伐、倭・高句麗戦争、吉備氏の乱、磐井の乱、武藏国造の乱

丁未の乱、乙巳の変。

そして聖徳太子による17条憲法の制定で、「和を持って尊しとなす」という一応の平和の大前提が形成されたのだが、その後も実際の日本の曙は、歴代王朝による権謀術策・内乱の歴史である。

 

白村江の戦い、壬申の乱、隼人族の反乱、藤原広嗣の乱、恵美押勝の乱……
内乱が起こるたびに、無辜の皇族や、豪族が殺害され体制は作り変えられた。一族の裏切りや後継者争いのために命を落とした人びとの数は、数えきれない。

奈良は悠久のロマンの地ではない。血塗られた争いの場でもあるのだ。

 

死者の怨念を鎮めるために、陵が誕生し、寺や神社が建立され、一族の末裔が墓守や司祭者として配置され、先祖代々墓所を守ってきた。
そして多くの墓守たちの子孫は、かつて自分の先祖がどのような経緯でその土地に住まわされたのかも忘れ果て、農民としてあるいは神職として千数百年、生まれそして死に、代を重ねて今日にいたっている。

伝承も忘れ去られ、ごく一部の記憶の断片が、彼らの家系図や系統図に遺されている。

そんな歴史を持つ大和人や末裔が、奈良や天理や桜井には今も行きている。彼らは先祖を語らないし、周囲もそれを語らない。しかし彼らの笑顔の中には、千数百年も昔の恨みや怒りが本人も知らない内なる世界に刷り込まれていることを。

もしも貴方が奈良を訪れるなら、たった一冊でも良いから学校で教えられなかった古代奈良の歴史を紐解いて欲しい。

そして、時代に翻弄されながらこの世を去った多くの先人の想いをあなたなりに体感して欲しい。
参考となる書籍を並べたが、学者の本は面白くない。歴史的事実は言いながらも、学者の主観や類推が既成事実として並べられている。これらの書籍の7割近くを読んだ経験から言えば、関裕二や井沢元彦の書籍は、歴史推理モノとしても面白いし、その次代の人びとの心の動きや事件の動機などが、納得しやすいと感じる。我々が学校で学んだ日本歴史は、校正の統治者によって、都合よく脚色されているかもしれないし、場合によっては犯罪者と被害者が、真逆の立場で描かれているものもあると考える。

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